クールな国王陛下は若奥様にご執心
 一睡もしていなかったが、眠気は感じない。リーレは病弱だった母に似てしまい、あまり身体が丈夫ではない。たとえ眠れなくても身体を休めたほうがいいとわかっているのに、その場から動けずにいた。
 次第に空に昇っていく太陽が、そんな彼女の姿を照らす。輝く陽光が、金色の髪に反射して煌いた。
 リーレは目を開くと、降り注ぐ陽光に目を細める。
「眩しい……」
 座ったまま窓の外を見上げ、思わずぽつりとそう呟いた。
 この明るい光が、落ち込んでいた気持ちを引き上げてくれるような気がする。
 夜は、永遠には続かない。必ず朝が訪れる。使い古された言葉が、こんなにも胸にしみたことはなかった。
「私で、よかった」
 そうしている間に少しずつ気持ちが落ち着き、リーレは声に出してそう言う。
 メーオ王国のように王太子を替えられたのではない。父や姉が健在ならば、この国は何も変わらない。そして、そのメーオ王国の出身である義兄のロイドも、咎められなかった。
 何の役にも立っていないとは思わないが、それでも国にとって重要な地位に就いていない自分でよかったのだと思う。
 だが父や姉の嘆きは相当なものだろう。リーレだって、これが父や姉に降りかかった受難ならば、胸が張り裂けそうになっていた。
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