クールな国王陛下は若奥様にご執心
 王城内の雰囲気は暗く、俯いている者が多い。
 リーレは努めて明るく、すれ違う者達に声をかけて回った。だがその気丈な姿がまた、見る者の涙を誘う。それでも笑顔を絶やさないまま、リーレは父の執務室に向かった。
 いつもは静かなその場所も、今日は騒がしいようだ。そして父の他に、姉の夫のロイドの姿もあった。
 ロイドはリーレの姿を見ると、表情を歪める。あまりにも悲哀に満ちたその様子に、リーレの笑みも途絶えてしまう。きっと祖国を襲った受難、さらにそれがこの国にまで飛び火してしまったことに、心を痛めているのだろう。
 父もまた、苦悩に満ちた顔をしていた。
 その姿は、たった一日で随分やつれたように見える。
(お父さま……)
 父に縋り、泣いてしまいたくなる。
 きっと優しく抱き締めてくれるだろう。
 だが、それでリーレの心は軽くなったとしても、父の悲しみは増すばかりだ。きっと何度も、腕の中で泣きじゃくる娘の姿を思い出してしまうだろう。
 どうせ別れなければならないのなら、笑顔のまま記憶に残りたい。
 リーレは父と義兄に向かって微笑んだ。
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