クールな国王陛下は若奥様にご執心
 変に期待を抱いてしまうよりも、カリレア王国に着く前にそれを思い知ってよかったと、自分の心に言い聞かせる。祖国では、末娘であまり丈夫ではないリーレは父や姉に大切に守られてきた。だが、ここからはひとりで生きなければならない。
(もう、今までとは違う。しっかりしなければ)
 優しい父と姉の姿を思い出し、ふいに涙が滲みそうになる。もうこんな遠くまで来てしまえば、泣いてもふたりを悲しませる心配はない。それでもひとりでしっかりと生きるという決意のために、リーレは涙を堪えていた。
 ゆっくりと走ったせいで、五日ほどの道のりは七日に伸びてしまったが、そのお陰で体調を崩すこともなく、無事にカリレア王国に辿り着いた。
(ここが……カリレア王国)
 馬車の窓から見える光景に、目を奪われる。
 初めての異国の地。
 やはりカリレア王国は、大きな国だった。
 辺境の町でさえ、レスレイラ王国の王都ほどの規模だ。
 旅人も多く、荷物をたくさん積んだ荷馬車も頻繁に通っている。石畳を敷き詰め、きちんと整備された道が町の奥まで続き、様々な服装をした者が行き交う。
 活気ある光景に、リーレはしばし自分の立場も忘れてその様子に魅入っていた。
(人はとても多いし、商業も盛んだわ。でも、緑の少ない土地のようね。しかも砂地が多いようだわ)
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