クールな国王陛下は若奥様にご執心
 部屋は思っていたよりもずっと広かった。
 家具などがあまりないせいで、実際よりもそう見えたのかもしれない。
 床には幾何学模様が織り込まれた固めの絨毯が敷き詰められ、重厚そうな緋色のカーテンの奥には、大きな窓があった。だがそれは空気の入れ替えをするための窓のようで、大きく開くことはできないようになっていた。それでもこの窓から、新鮮な空気や太陽の光を取り込むことができるだろう。
 侍女達が手早く寝台を整え、着替えを手伝ってくれた。長旅で疲れているだろうから、ゆっくりと休んだほうがいいと言われ、リーレは素直に頷く。侍女達が退出すると、重厚な音を立てて扉が閉められた。
 ひとり残されたリーレは言われた通りに休もうと、寝台に横になる。だが、眠ることはできなかった。身体はとても疲れているのに、神経が昂っているのだろうか。
(眠れない夜。……まるで、あの時のようね)
 夜明け前に青ざめた顔をした姉が訪ねてきたことを思い出し、リーレは身体を起こした。
 滑らかな手触りのカーテンに触れて開き、窓から夜空を見上げる。
 月の明るい夜だった。
 青白い光が空から降り注ぎ、外の様子がよく見える。
 背の高い木の陰が、建物の影に伸びているのをぼんやりと眺めていると、ふいに背後の扉が開かれた。
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