クールな国王陛下は若奥様にご執心
 こんな夜中に、誰が訪ねてきたのだろう。
 びくりと身を震わせ、とっさに目の前のカーテンに身を隠した。床に付くほど長いそれは、小柄なリーレの姿を覆い隠してくれる。
 だが入ってきた人物は、月明かりだけでもリーレの存在にすぐに気が付いたようで、まっすぐにこちらに向かって歩いてきた。
 近付く気配。
 胸の鼓動が高まる。
(誰……なの?)
 いくらリーレの扱いが人質同然だとしても、こんな真夜中に一国の王女の部屋に無断で立ち入るなど、許されることではないはずだ。
 不安になる心を煽るように、重々しい靴音が響く。
 その音から察するに、入ってきたのは侍女などではない。軍靴を身に着けていた女騎士のものと似ているが、彼女はもっと軽い音だった。
 ならば相手は、男性かもしれない。
 靴音はリーレの目の前で止まる。
 びくりと身体を震わせた瞬間、カーテンが引き剥がされた。
「……っ」
 リーレの背後から降り注がれる光が、侵入者の姿を照らし出した。
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