クールな国王陛下は若奥様にご執心
 青白い光が照らし出したのは、やはり想像していたように男性だった。
 鋭い視線が、射貫くようにリーレの姿を捕らえる。
 長めの黒髪から覘く、氷のような、アイスブルーの瞳。
 獲物を睨む肉食獣のような威圧に、言葉を発することもできずに身体が震えた。震えを押さえるように両手に力を込めて、リーレは彼を見上げる。
 こんな時間に部屋を訪れたのは、誰なのか。
(この人は……、きっと……)
 メーオ王国を攻め、そしてレスレイラ王国に王女を差し出すように要求した、カリレア国王に違いない。
 会ったことがないのにどうしてそう思ったのか、リーレにもわからない。ただ、彼の存在感、そして鋭すぎる瞳は、リーレの心を激しく騒がせた。
 冷酷な男だと言われていた。
 だからリーレも、どこかで氷のようなイメージを持っていた。
 しかし目の前の男の瞳から感じるのは、まるで燃え盛る炎のような激情だ。
 彼は、小動物のように震えるリーレを見下ろした。
 月明かりに照らされたその姿は、荒々しい気配とは裏腹に整った容貌をしている。侍女達や女騎士と同じ、カリレア国民の特徴である艶やかな黒髪。だが、その肌は血が通っていないのではないかと思うくらい白い。
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