クールな国王陛下は若奥様にご執心
 外見だけならば、命の宿らぬ冷たい彫刻のように見える。それなのに彼の視線だけは、荒々しさを感じさせるくらい強い。
 そのアンバランスさが、危うい雰囲気を漂わせていた。
「お前が、レスレイラ王国の王女か」
 彼はリーレにそう問いかける。
 感情の起伏をあまり感じさせない冷徹な声。あの瞳さえ見なければ、冷たく研ぎ澄まされた男だと思っただろう。
 やはり彼は、その瞳だけが異質な存在のようだ。
 本当の姿はどちらなのだろう。
 そんなことを考えていると、ふいに彼の手がリーレに向かって伸ばされた。びくりと身体を震わせるリーレを気遣うことなく、長く伸びた金色の髪に無造作に触れる。
「噂に違わぬ美貌だな。あのレスレイラ国王が、己の首と引き換えにしても差し出そうとしなかったのも理解できる」
「お父さまが?」
 とっさに声を上げた。
 国王である父が、カリレア王国に対してリーレよりも己の命を差し出そうとしていたなど、まったく知らなかった。
「何てことを。お父さまと私の命は同じではないわ。それに、私を殺せと命じられたわけでもないというのに」
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