クールな国王陛下は若奥様にご執心
「詳しい話は明日だ。もう夜も遅い。今夜はゆっくり休め」
 そう告げると、彼の姿は扉の向こうに消えた。
 だがリーレはレイドロスの気配が遠ざかってもまだ、動けずにその場に立ち尽くしていた。
(王妃? 私が? そんなことって……)
 戦争で手柄のあった者にくれてやろうと思っていたと、レイドロスは語っていた。あの女騎士が言っていたように、それはまさに戦利品のような扱いだ。だが彼はそうせずに、リーレを自分の妃にすると言う。
 大国カリレア王国の妃。
 敗戦の国に与した咎で、人質のようにこの国に連れてこられた立場からすれば、考えられないことだ。人によっては玉の輿だと言うだろう。
 どちらにしろ、リーレに拒む権利はない。
 だが祖国の父と姉は、奪われてしまった王女が敵国の妃になることをどう思うだろうか。
(どうしよう……。あんなことをしてしまったせいで)
 きっと嘆き、怒るだろう。
 悲しませまいと思ってやったことが、さらに事態を悪化させてしまったように思う。あのとき大人しく怯えていれば、彼の目に留まらずに済んだのかもしれない。
 リーレは呆然と、床に散らばる金色の髪を見つめた。
 この手で、自分の運命を大きく変えてしまったのだ。
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