クールな国王陛下は若奥様にご執心
 返事がないことを不審に思ったのか、侍女が遠ざかる気配がした。諦めたのかと思ったが、彼女はあの女騎士を連れてきたようだ。
 先ほどよりも強く扉が叩かれ、返事を待たずにそれを開けた女騎士は、床に座り込むリーレ、そしてその周囲に広がる金色の髪を見て息を呑む。
「……っ」
 背後にいた侍女が悲鳴を上げた。
「誰が、このようなことを」
 呆然と、呟くようにそう言った女騎士の言葉には、憐憫の情が込められていた。彼女の手が、座り込んだままのリーレの背に添えられる。
 ずっと冷たい態度だった女騎士がかけてくれた優しさに、とうとう今まで堪えてきた涙が溢れ出てくる。
(……泣かないと、決めたのに)
 だが一度流れてしまったものを、もう留めることは不可能だった。リーレは座り込んだまま、拭うことさえできずに涙を流し続けた。
 それは、今まで抑えてきた感情が爆発してしまった瞬間だった。
 侍女は床に散らばった髪を綺麗に掃除して、温かいお茶を出してくれた。リーレが落ち着くのを待ってから仔細を尋ねてきた女騎士に、昨晩のことを告げる。
 夜中に侵入してきた男性。
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