クールな国王陛下は若奥様にご執心
 滑らかな光沢の絹は驚くほど軽く、カリレア王国の貴族の女性はこんなにも贅沢なドレスを着用しているのかと、リーレは祖国との違いに驚く。この繊細で豪奢な美しいレースは、他の大陸から輸入しているようだ。
(そういえばこの国に入る前に、たくさんの荷馬車を見たわ。さらに陸路だけではなく、海路も他の大陸にまで伸ばしているのね)
 商業が盛んだということは、国は豊かで潤っている証拠だ。
(それができるだけの資金があるということ。やっぱりこの国は大国だわ。資金が他の国と桁違いだもの)
 だがその資金の中には、戦争によって他国から奪ったものも含まれている。さらに今後メーオ王国から提供される金は、この国をますます栄えさせるのか。
 国民の生活を豊かにするという点だけで考えれば、レイドロスは良い王なのだろう。だが周辺の国から向けられる憎しみや恨みは、少しずつ国の内側に浸食していくような気がする。
 そんな不安に駆られて、リーレは袖にもたっぷりと使われているレースを眺めた。こんなドレスが着られなくとも、祖国ではしあわせだった。
 贅沢品は、本当に人をしあわせにしてくれるのだろうか。
 それから侍女と女騎士キィナに連れられて、リーレはレイドロスのもとに向かった。行く先は彼の執務室のようだ。
 こんなにも豊かな大国の、王の部屋なのだから、とても豪華で広い部屋を想像していた。
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