なぜか私、クラスのイケメンツートップに告られました!

結局この兄妹のやり取りを聞き取った母がニッコリと笑顔で差し出した浴衣一式を、問答無用で着せ付けられた。

そこは母の昔取った杵柄的なものだ。
結婚してから辞めてしまいブランクもあるものの本人も着物好きで、ちょこちょこ着ているために着付けは得意そしてヘアアレンジはお手の物だった。

昔は母に結ってもらった凝った髪型が自慢でもあった。
さすが、働いてなくても元美容師。

あっという間に着付けとヘアスタイルを完成させた。

「私もまだまだ働けそうね」

おほほと高笑いを残して、母はいそいそと片付けに去ってしまう。

仕上がりを鏡で見ても文句無く綺麗に仕上がっている……。

せっかくしてくれたものを脱ぐ、解くなどできる訳もなく私は諦めの境地で少しお茶を飲んだ後約束の時間が近付いたために家を出たのだった。

「今度ウチにもそのイケメンくん達連れて来なさいねー」

母はかなりの自由度の高い柔軟性のある、ミーハーなアラフィフであった……。

ガックリその母のセリフに肩を落としつつも、駅に向かって歩けば周りは浴衣が多くそこまで目立たないことに気づきホッと息を吐き出して歩いた。

今日は、私の最寄り駅から徒歩十五分の河原での花火大会。
駅で待ち合わせにしていた。
時間は十六時半。

私は五分前に着いた。
言わずもがな、下駄が慣れなかった為だ。
< 74 / 163 >

この作品をシェア

pagetop