俺様外科医の極甘プロポーズ

「大丈夫? 送って行ってあげるよ」

「結構です」

「いいから、いいから。荷物も多いみたいだし持ってあげるよ。おねえさん、もしかして家出? 帰るとこないの?」

「違います!」

 男はじろじろと私を見ながらスーツケースをつかみ取る。

「返してください」

「もちろん返すよ。ひと聞きの悪いこと言わないでよ。俺は善意で駅まで運んであげるって言ってるの」

 すぐにでもスーツケースを奪い取って逃げ出したいのに、酔ってまともに歩くこともできない。

「ああほら、気を付けて! タクシーで送ろうか」

  いいながら男は私の腰に手を回した。そしてホテル街へと歩いていく。このまま連れて行かれたら大変だ。怖い。助けて。

「――りさ!」

 後ろから伸びてきた手が私の腕をつかんだ。この声は……。

「……先生?」

「なにやってるんだよ。こんなになるまで飲んで!」

 先生はため息交じりに言う。

「あんた誰だよ!」

 男は威嚇するように先生をにらみつける。

「お前こそ誰だよ。酔った女をホテルに連れ込もうとするビジネスマンの生態ってタイトルでライブ配信してやろうか?」

 先生はスマホを男に向けるとにやりと笑った。

「3・2・1」

「まじかよ。やめろ!」

 男はスーツケースを放り投げ、慌てて手で顔を覆うと、一目散に逃げだした。

よく見ると、先生のスマホはスリープモード。ライブ配信なんてできる状態じゃない。あの男よりも、先生の方が一枚も二枚も上手だったらしい。

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