俺様外科医の極甘プロポーズ
「いい部屋だね」
「そうですね」
自分でも驚くようなそっけない返事で、先生は「どうしたの?」といって、私の顔を覗き込む。
「だって、先生ったらあの中居さんとばかり話してるから……」
「なんだ、焼きもちか」
先生はハハと笑って私の頭をポンポンとたたいた。私は思わず言い返す。
「違いますよ」
「違わないだろ。まあ、いいよ。うれしいから」
「だから、違うんですって!」
「むきになって反論するところもかわいいよ」
そんなことを言われたら、もう何も言えなくなる。私は口をつぐんだ。先生はそんな私の顎先を親指と人差し指で挟むとくいっと持ち上げた。
「なにするんですか!」
「なにって、キスだけど。文句ある?」
反論する間もなく、先生の唇が私の口をふさいだ。
不満も不安もなにもかも忘れさせてくれる。そんな優しいキスだ。何度もついばまれて、舌で口内をなでられると頭の芯がしびれて立っていることさえままならない。私は先生の背中に腕を回した。
無音の室内には、私たちの息遣いと衣擦れの音しか聞こえてこないはずだったのに、いきなり部屋のドアの向こう側で「失礼します」という声がして、私たちはとっさに体を離した。
まもなく戸が開き、お膳を持った中居さんが現れる。
「お食事をお持ちいたしました。ご準備させていただいてもよろしいでしょうか?」
「ありがとうございます」
冷静に受け答えする先生。ふと見れば、唇に赤い色がついている。しかも割と盛大に。
これではキスしていました!と言わんばかりの状態だ。
若い中居さんはそれに気づいたのか、はっとした顔で目をそらした。
私は気まずさと、優越感のはざまで揺れ動きながら食事がテーブルに並ぶのを待った。