俺様外科医の極甘プロポーズ
クリスマスを翌週に控えた金曜日。私たちは久しぶりに会議室に集められた。
部屋に入るとすでに院長と副院長、そして壱也先生がいた。
今朝家を出るときには壱也先生はいい報告があると言っていた。もしかして、このことだろうか。私はドキドキしながら話が始まるのを待った。
事務長はコホンとひとつ咳ばらいをし、マイクのスイッチを入れた。
「皆さんお疲れ様です。今日はお集まりいただきありがとうございます。早く業務に戻らなければならないと思いますので、単刀直入に申し上げます。わが柏瀬病院は閉院の危機に直面しております」
理事長の言葉に、室内がざわめいた。こんな発表をするために私たちは呼び出されたのだろうか。
全然いい報告なんかじゃない。私は壱也先生を見た。けれど先生はいつものすました顔のまま微動だにしない。
「皆さんお静かに! 話はこれで終わりではありません。こちらをご覧ください」
事務長はパソコンを操作して、スクリーンに何やらグラフらしきものを映し出す。
「これは壱也先生が着任されてからの診療報酬に関するグラフです。ご覧いただいてわかるように、以前に比べると倍以上の伸びがあり来年度には黒字に転換する予測です。このままいけば、閉院を免れることができるでしょう」
事務長は、今まで公開していなかった情報を公開するに至った理由として、職員全員が病院経営の一端を担っているということを再確認してほしいから、コスト意識を持つことで赤字脱却を後押ししてもらいたいからだといった。
そしてトップダウンで閉鎖的な経営をしていた柏瀬病院から時代に合わせたオープンな経営を行う病院へと変わりますと、事務長はみんなの前でそう約束をした。