そして、失恋をする
「千夏」

僕はディスプレイに表示されていた、女性の名前を誰にも聞こえないぐらい小さな声で口にした。そして親指で液晶画面を操作し、千夏から送られた新着のLINEのメッセージを確認した。

『体調は、昨日とあまり変わらないよ。心配してくれてありがとう。でも、陸君とこうしてやりとりできる日も後三日しかないね。私、後三回寝ると死ぬから』

千夏から送信されたLINEの文章には、かわいらしいパンダのスタンプが押してあった。にっこりと笑ってるパンダのスタンプだけ見ると、彼女は元気そうにも思える。けれど、文章からでも伝わる、千夏の死が現実に迫ってるのは確かだった。

「なにやってるの?」

「なにもやってないよ」

希がスマホをのぞき込むように見たので、僕は慌てて胸の前で隠した。

「怪しい」

眉間にしわを寄せて見つめる希に、僕は「なにもやってないよ」ともう一度言った。
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