そして、失恋をする
「帰ろっか?」

小さな声で、僕は千夏に声をかけた。

「お別れ?」
僕に視線を合わさず、千夏は夜の景色をながめた。千夏の後ろ姿が、僕の瞳に映る。

「もう決めたの?」

「なにを?」

「私が生きる方の選択か、私が死ぬ方の選択か?別れる前に聞きたい」

「もちろん。そんなの生きる方に決まってるだろう」

僕は力強く、自分の想いを千夏にはっきりと伝えた。

風がまた吹いて、千夏の長い髪の毛をなびかせた。

「そっか。陸なら、なんとなくそう言うと思った」

千夏はうれしそうに言いながら、僕の方に振り向いた。振り向いた千夏と目が合い、ドクンと、僕の心音が鳴った。

「じゃあもし明日も陸に会えたらお互い付き合う約束」

否定させない千夏の言い方に、僕の頬が赤くなる。

ーーーーーー千夏と付き合う?

唐突に千夏からの告白みたいな言い方に、僕の心音がドクンと、また鳴った。さっきよりも、大きな音を立てて。

「会えなかったら?」

冷静な口調で、僕は千夏にそう訊ねた。

「私のことは忘れて、陸が幸せでこの先も生きる約束」

千夏がまた約束事を決めて、僕にそう伝える。

ーーーーーー忘れる。千夏のことを?

打って変わって、さっきとは真逆の約束事に僕の思考が停止する。

ーーーーーー忘れる?千夏のことを?

想像できないというより、したくない想像して僕の思考がさらに停止する。
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