そして、失恋をする


「来てくれて、ありがとう」

千夏が入院している総合病院に到着すると、彼女は屈託のない笑顔を浮かべて僕に言った。

入院服を着て、白くて細い腕に点滴をつながれている千夏は、昨日見たときよりも弱々しく見えた。

「大丈夫?」

病院のベッドの上に座ってどこか疲れた顔をしている千夏を見て、僕は心配そうな声で言った。

「なにが?」

「いや、なんか入院してるから」

「いつものことだよ」

「そう……なんだ」

千夏の生活はこれが普通なのだろうか、ベッドに座ってどこか遠くを見つめている彼女はなんだか辛そうに見えた。

「なんか、僕に用事があったの?」

「陸君に、会いたかっただけ」

千夏は、あっさりとした口調で僕に用件を伝えた。

「ダメ?そんなことで会ったら」

「いや、全然いいよ」

そう言って僕は、胸の前で慌てて両手を振った。
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