そして、失恋をする
「だから、死のうとしたの?」

「うん、そう。どのみち、私は一周間しか生きれないから」

やっと今、昨日千夏が死のうとしていた意味がわかった。癌で長く生きれないから、自分で死のうとしたんだ。

「助けて、ごめん」

「ほんとうです。私、死にたかったのに」

「ごめん」

「冗談です。助けてくれたことに、感謝しています」

「え!」

笑顔を浮かべてすぐに言い直した千夏に、僕は少し驚いた。

「一周間しか生きれないとわかったときは、ほんとうに死にたかった。だから、車かバイクに轢かれて私なんか死んでしまいと思いました」

「………」

「でも、陸君に助けてもらって考え方が変わったんです」

「僕が助けて………」

「はい」

千夏は、細い首を縦に振った。

「どうせ、私は一周間しか生きれない。けれど、この一周間で、私が生きた証を作ろうと思ったんです」

千夏は僕に視線を向けて、今の思いを伝えた。

「あのとき陸君が助けてくれていなかったら、きっと私は後悔していました。だから、感謝しています。助けてくれたことに」

そう言って弱々しく僕の手を優しく握った千夏の白い手が、なんだか冷たく感じた。
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