そして、失恋をする
「君は、どうなの?僕と付き合うことになったけれど、学校に好きな人はいないの?」

「千夏。秋野千夏。最初に名前、教えたよね」

「ああ、そうだったね………」

落ち着いた声で言った千夏の言い方は、まるで僕に名前で呼んでほしそうに聞こえた。

「千夏は、どうなの?僕と付き合うことになったけれど、学校に好きな人はいないの?」

かすかに頬を赤くして、僕は彼女の名前を口にしてさっきと同じ質問をした。

「いないよ、私も。好きな人」

「ほんとに?」

「ほんと」

短く答えた千夏はそっけなかったが、嘘をついてるようには思えなかった。

「私、もうすぐ死ぬんだよ。今さら人を好きになんかなりたくないよ」

なんとなくだが、千夏の気持ちがわかる気がした。

死の宣告を受けて人を好きになったて、辛いだけだ。僕は死の宣告を受けてないが、大切な千春をバイクで失ってるから、その人を好きになりたくない気持ちはわかる。
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