そして、失恋をする
「母親がお酒ばっかり飲んで帰宅する時間がおそいせいで、父親は母親に対する束縛が日に日に強くなっていたんだ。その悪循環が続き、夫婦関係はいつしか修復できないほどに壊れていた」

ほんとうは、こんなこと千夏に話したくなかった。けれど、話してスッキリしている自分も心の中にいた。

「父親の束縛から解放されるために、陸君のお母さんはお酒に逃げたのね。そして、こっそりと好きな人と会ってたんだ」

僕は゛そんなことはない〟と否定したかったが、口に出して言うことはできなかった。きっと彼女の思ってることと、僕の思ってることが一緒だからだろう。

「ごめん。こんなこと話して‥‥‥‥‥」

「ううん、話してくれてうれしい」

そう言って千夏は、首を左右に振った。
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