* Reality * ~鏡の顔~
トントン…
ガラッ

「氷室君待ってたよ。」

「お待たせしてすみません。常務、相変わらず情報が早いですね。」

盗聴器から聞こえる密談の声で、リアルな時間に戻った意識…

ずっと 隣の男に抱きしめられていた様だ。

「離して絢也…仕事よ。」

「別にこのままでも 問題ないだろ?」

何で?いつの間にか車の座席が倒され 絢也が覆い被さっていて意味がわからない。

「絢也、いい加減にして…ん、ん───」

二人のキスのリップ音と盗聴の声が車内でダブルで聞こえる…


この男は───


「はぁ///ここ、俺ミッション無理…」


「馬鹿なの?この仕事は心を捨てないと出来ないってわかっててしてるはずよ。絢也、仕事辞めたら?私は、二人の話をちゃんと聞いていたからね。」


「だよね…俺お前とこの狭い車内で エロいフェロモン駄々もれの中 平常心とか絶対無理。まじヤバい///」

「仕事も終わったみたいだし、お疲れ絢也。多分あなたとは今日で最後だと思う。駅まで送ってあげようか?」

「はぁ…キツいな。そうだな、いい加減俺もここを諦めないとな。ここで降りる、またどこかで会える事を願うよ。お疲れ。」


「たから、ここじゃなく胡桃だって…」



私の小さい呟きは聞こえないのか、絢也は颯爽と人混みに紛れて見えなくなった…。


どうしても あの人の残像が私の中にあり 誰も心の上書きが出来ない状態で風が吹き荒れていた…

今はまだ無理。かと言って いつになったら平気になれるかなんか、私自身わからないのだから───

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