ヴァーチャル・リアリティ
「お願い晴道、ここから出して!」


あたしも2人と同じように叫び声を上げた。


しかし、映像の中の晴道は笑顔を崩さない。


近づこうと歩けば晴道は遠ざかる。


ゴーグルの中にオレンジ色の花がクルクルと回転しているのが見えた。


それが画面をどんどん埋め尽くして行く。


晴道の顔すら、花で隠れて見えなくなる。


グルグルと回転し続けるオレンジ色の花を見ていると、次第に足の力が抜けて行った。


「ちょっと……やめてよ!」


そう叫ぶけれど、力が抜けてその場に崩れ落ちてしまった。


歪む視界。


遠のく意識。


「ようこそ。永遠に続くVRの世界へ」


世界が暗転する寸前、アナウンスの声がそう伝えたのだった。



END
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