ヴァーチャル・リアリティ
「ちょっと、一旦中止してください!」


梨花子の声が聞こえてくる。


しかし、アナウンスは流れない。


「痛っ!」


続いてそんな声が聞こえてきてあたしは立ち上がった。


「梨花子、どうしたの!?」


「ゴーグルを外そうとしたんだけど……」


そこで言葉が止まる。


どうしたんだろう。


事態を把握するために自分のゴーグルに手を伸ばす。


これを外せば部屋の中の状況がわかる。


アユがそこにいるのか、いないのかも……。


不安と恐怖が胸の中に渦巻き始める。


ゴーグルを取るべきじゃないと、心の奥底で自分の声が叫んでいる。
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