ヴァーチャル・リアリティ
「見覚え?」


あたしは書斎をグルリと見回して首をひねった。


良くある書斎だとは感じるけれど、見たことはない。


「気のせいだろ、それより机になにか置いてないか?」


陽大がそう言うので、あたしは机へと歩み寄った。


今度は足踏みで移動できるようになっている。


その事に安堵している自分がいた。


机の上には原稿用紙と高級そうな万年筆が置かれている。


原稿用紙には文章が書かれているが、読み取ることはできなかった。


あえてそこだけボカしているのだ。
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