恋が始まる
本当は分かってたんだよ。
結局先生は先生だって。

あんなこと言ってたのに、どんなメールにもちゃんと返事をくれて。優しい返事は結局、‘先生’のもの。

頭の真ん中が冷たくなる。
不快な冷たさが喉まで降りてきて、諦めの溜め息になって溢れた。

もういいや。
いっそ、思いっきりガキっぽい本音で困らせてやろう。

先生の前では大人っぽくありたいと思ってたけど、どうせ生徒で終わるなら、ありのままのほうがちょっとは可愛いかもしれない。


「先生?今は先生だけど、相手がさ、本当に私を愛してくれるはずの人だったら、あっさり電気消されたことに、傷ついてもいいの?」

すぐ目の前にいるはずの先生を、一生懸命見つめるけど、見えない。

暗すぎて、見えないよ。


「葵…?どういう意味…初めてだし、暗い方がええんやないの?恥ずかしかなって…。それに、本当に私を愛してくれる人ってなんやねん…」



違うの。もちろん、恥ずかしいよ。身体にも自信なんて無いし。
けど、私はそんな事言ってるんじゃないの。

「違う。先生から、何も感じないの。私のこと欲しいって、感じないの。私を悦ばせさえすれば終わり?…先生は、私の身体になんて興味無い…」

「隼斗やって…‼。なんなん?今更、先生に戻らせるつもりなん?」

初めて見る語気の荒い先生。だけど、そんなこと気にならなかった。

「‘先生’でいようとするのは先生でしょ!?ずっと、ずーっと、先生は、先生のまま」

「それは、否定できへんけど…」

不意に灯りがついて、突然の眩しさに目を細める。けどすぐにまた視界が陰る。

先生の胸に強く押し付けられる。

「葵…。愛してる」
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