恋が始まる
抱き締められたまま首を振る。
いらない。今更そんな言葉欲しくない。

「愛してる。ずっと。」

「嘘」

「嘘やない。確かに先生として振る舞ってたのは認める。けど、そんなん、お前に溺れて捨てられるのが怖かったんや。決めるのはお前やから。」

「捨てられる…?そんなこと」

そんなことありえない。私は先生のことがずっと好きなのに。

「そんな事無くないの。怖いんやで?おっさんなんやけん」

「本当に?」

「本当に。けど、葵が憧れてるのは大人な俺やから。格好いい大人であろうと必死。…本当は、葵の身体、隅から隅まで見たい。枯れかけてた欲望が煮えたぎってる」

え…、ちょ。

「けど、そんなん、カッコ悪いやろ?葵の好きな俺やない。幻滅される」

意外すぎる先生の突然の告白に、言葉が出ない。


「ほら、引いたやろ?どんなに普段はかっこつけてても、所詮こんなもん。今だって、余裕なくした顔、葵に見られたくない」


抱き締める腕が強まる。


「でも結局…。葵に逃げ道残しといたはずが、本当に逃げられそうになったら、必死に繋ぎ止めてんねんな。もうとっくに…、溺れとったみたい」
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