LOVE DAYS

「――――…で、ここの値がxだからここを移行して、んで…ってお前聞いてんのかよ」


思わずボーっとしてたあたしの頭に晴馬君がペンで突く。


「えっ!?」

「え?じゃねーよ!!ぼーっとしやがって」

「ご、ごめん」

「あー…ごめん俺の教え方が悪いな」

「う、ううん違うよ。ちょっと晴馬君の事、見直しちゃった」


エヘっと笑うあたしに晴馬君はなぜか白い目で見てため息を吐き捨てる。


「つか俺って、お前から見てどんだけ適当な奴なんだよ。つか、そんな余裕あんだったら早くやれよ」

「…はい」

「分かんなかったら言えよ」

「うん…」

「こっからここまでの問題はこの公式を使うから――…」


晴馬君はその後、丁寧に教えてくれた。

分からないと言ったあたしに最後まで教えてくれた。


だから晴馬君のお陰で帰りに全部プリントを提出出来た。


「晴馬くんっ、ありがとう。助かったよ」

「んじゃご褒美頂戴」


ニヤリと見下ろした晴馬君に瞬きを忘れるくらい目を見開いてしまった。

え、これはそのキスってやつですか?

うん、でも助かったのは晴馬君のお陰だけど…


「えっと、それはキスとか?」

「つかマジしてくれんの?俺は飲み物で良かったけど」

「ちょ、えっ、あっ…うん、飲み物で」


みずから言った事に焦った。

何メートルか先にある自動販売機に向かって走るあたしの背後から晴馬君のクスクス笑っている声が聞こえて来る。


もー、やだ。

あたし何言ってんだろう。
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