極上な王子は新妻を一途な愛で独占する
バルデス王国ユジェナ侯爵家の次女シェールが、先代国王の第七王子アルフレートと結婚したのは、二年半程前の事。

政略結婚で、顔も知らない相手だった。

と言うのも、アルフレート王子は病弱で公の場に出た事がなく、絵姿も出回っていないからだ。

謎に包まれた王子に関する噂は、良くないものばかり。

人前に出られない容姿だとか、狂暴な性格の為、現国王の兄の命令で監禁されているとか。

いくら王子と言っても、そんな曰く付きの相手と縁を結びたがる貴族はいない。
国王自ら打診をしても良い返事をする者はなく、王家は困り果てていた。


そんなある日、シェールの父親ユジェナ侯爵が名乗りを上げる。

『我が娘を是非アルフレート殿下の妃に!』

彼は意気揚々と宣言し、それまで歯牙にもかけなかった妾が産んだ娘シェールを屋敷に呼び寄せ花嫁に仕立て上げたのだ。

平民として暮らしていたシェールは、瞬く間に王弟アルフレートの妃となり、ユジェナ侯爵家は王家の縁戚となった。

要らない娘を一人差し出したけで、大きな見返りを得たユジェナ侯爵は、大層喜んでいたようだ。

王家からの覚えも良くなった。国王が大層感動されているのだと、義理姉のマグダレーナが語っていたのを覚えている。

ユジェナ侯爵家は、最盛の時を迎えていた。
< 2 / 102 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop