極上な王子は新妻を一途な愛で独占する
「あと、三十七日……」

暦を確認したシェールは、抑えきれない笑みを浮かべた。

「長かったけど、あとほんの少し」

しみじみと呟いて、今日の日付にバツをする。

あと、たった三十七日で、この生活から抜け出せる。

待ち続けたその時が迫っていると思うと、踊り出したいくらい気分が高揚した。

「でも、最後まで夫の顔も知らないなんて、変なの」

一人でクスクス笑いながら声にする。

結婚して以来、一人で過ごす事がほとんどなので、独り言が癖になってしまっていた。


毎日恒例の暦の確認が終わると、シェールは部屋を見回した。


王弟妃の部屋とは思えないほど、殺風景な部屋。

ユジェナ侯爵は、花嫁支度はしたけれど、その後は娘の存在など忘れたかの様に、一切の支援をしなくなった。

シェールの財産は、毎月与えられる王弟妃としての支度金だけ。
それは使い道が決まっている為、自分の物を買う余裕はないから、シェールは輿入れの時に持参した以外の私物がほとんど無かった。


「自由に過ごせと言われても、ここでは本当にやる事がないわ。本もお裁縫道具もないんだもの」

シェールはそう呟くと、勢いよくベッドから降り立った。

「でも、今日はあそこに行く日だわ」

仕方無さそうな口ぶりなのに、とても嬉しそうな顔をして、シェールは出かける支度を始めた。
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