姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③



(嫌だ、嫌だ、嫌だ……! 

喜咲が死ぬなんて、嫌だ! 

ずっと傍にいたのは、喜咲だけだったのに! 

嫌だ、嫌だ、嘘だ……!)
 
喜咲とは、『テミス』から『フェニックス』に寝返ってすぐ、出会った。
 

彼女は『掟』に縛られる事を嫌い、家出をしてきたところを、フェニックスに拾われたのだと言っていた。
 

年が同じだった事もあり、銀司と喜咲はすぐに仲良くなった。
 

実はその時から、銀司は彼女を利用する気でいた。

テミスへの復讐を決意した彼はその後、意識の大半を、他者を値踏みことに傾けていた。


目の前の人間は、自分にとって有益か、無益か。

打算こそが全てだった。

それが、フェニックスでの教育の一つでもあった。
 

『馬鹿な奴だ。

こんな組織の中で、俺を信用するなんて……』
 

喜咲に対し、濁り切った暗い心で、そう思った事がある。
 
けれどもいつだって、明るく弾けるような笑みを向けてくれたのは、喜咲だった。
 



銀司は、それを思い出した。


だが、すぐに打ち消す。


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