姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
狼の体は、呆気なく遠くへ吹き飛ぶ。
狼は、地面にワンバウンドして、ようやく止まった。
それを追うように、狙撃隊が一斉に狼に狙いを定める。
だが、鬼山は一旦それを制した。
「待て、それは麻酔弾だろうな!」
一人が答えた。
「当たり前だ。
例え敵だろうと、安易に殺める事は禁じられている」
「……ならいい」
実はテミスには、フェニックスの構成員であろうと、
許可無しには相手を殺せない規則がある。
昔は、少しでも抵抗を見せた敵には、容赦無い制裁が与えられた。
しかし、しばしばそういった行動には、やり過ぎが起こる。
鬼山は十年前に、初めてテミスとして出動した時の事をちらりと思いだした。
山の中に、人を誘き寄せては食らう、人外の者がいるとの通報だった。