姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③



その時、確かに現場には狼男がいた。

テミスの優秀な狙撃隊は、鬼山が彼と対峙する前に、正確に狼男の額を打ち抜いた。


それは、獣系妖を死に至らしめる銀の弾丸だった。


問答無用に、そう言う事がまかり通っていた。

人権だのなんだときつく言われ始めたのは、ごく最近の事なのである。


だがその時は、もう一つ大きな事があった。

狙撃隊は、薄暗い家から飛び出して来た、半狂乱の女性をも、

確認せずに射殺してしまったのである。


その女性は、人間だった。


無抵抗でごく普通の、何の力も持たない人間だった。



若かりし頃の鬼山は、妖怪族ではなく、『普通の人間』が目の前で死んだ事に、少なからず衝撃を受けた。


体こそ、平均以上に大きかった彼だったが、心はまだ十代の少年のものだった。


彼は理不尽な現実に、打ちひしがれた。






……自分は、何のためにここに来たのだ。


狙撃の腕を見せつけられるためにか。



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