白衣の王子様の恋愛感 【番外編12月7日up】

「シャンパンは無いけど、貰い物のスパークリング・ワインならあるから出すか?」

シャワーを浴びて、濡れている頭をタオルで拭きながら、料理が並べられたテーブルを見渡すゆう君。

ミネラルウォーターのペットボトルじゃ味気ないよね。

「飲みたい所だけど・・・今夜は寮に帰らないと・・・送ってくれるでしょ?飲んだら運転・・・。」

私だって、そんなにお酒は強くないけど、イベントの時は飲みたい気分だよね。

なんか、物足りないもんね。

私でもそうなのだから、ゆう君みたいな大人は特にそうだよね。

「・・・日本に帰る準備はできている?」

テーブルを挟んで、ゆう君が顔を覗き込んできた。

「うん。昨日したよ。スーツケースに纏めてきてる。」

「・・・じゃあ、明日の朝、寮に寄って、それ取ってそのまま空港に行けばいいんじゃないか?」

それって、今夜は泊まれ、てこと?

寮が最後の日なのに、外泊していいのかな、と真面目な自分が顔を出す。

長くお世話になった寮を出る前の日に、他に泊まるなんて、気が咎める。

なぜだかわからないけど・・・。

「え?ん・・・。それでも、いいのかな・・・?」

実は、カリキュラムが終了した先週から、ポロポロとみんなが帰り始めていた。

折角だから、観光してから帰る人もいれば、もう少し残って学校で勉強していく人もいた。

もう半分以上は、寮にいない。

だから、今夜の寮でのお別れパーティーは、明日退寮する、私を含めた人のためパーティーだった。

みんな、ごめん、欠席で!

私も、後は退寮の手続きを明日の朝に、寮母のドロシーさんとするだけとなっていた。

「・・・そうしようかな・・・ゆう君の家に泊まるのも最後だしね。」

真面目な自分より、素直に自分の欲望に従う。

そして、最後という言葉に胸がチクリとした。

「ああ・・・そうだな。決まりだな。」

静かに言うゆう君は、少しだけ微笑んで冷蔵庫にスパークリング・ワインを取りに行った。

ゆう君も少しは寂しいと思ってくれているのかな?


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