ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
一晩床で寝たせいか、体の節々が痛い。
いくら夢中になったからって、土足の床で眠るなんて、シュヴァルツさんに呆れらただろうかと不安になり、ちらりと彼を盗み見た。
彼は、床に散乱しているリストのデータを見て、眉をひそめている。
「何をやっていた」
「犯人の手がかりを探していたんです。私が知っている情報が何かの役に立つかもしれないと思ったので」
ノア君は、私が書いた時間軸のグラフの端から端を行ったり来たり、楽しそうにはしゃぐ。
「すごいです!アカリ様は博識なのですね!」
「え?い、いやそんなことは……」
こちらが照れるほどに誉めてくれるノア君とは対照的に、シュヴァルツさんは表情を変えず、何も言ってはくれない。
ただグラフを覗き込んでいるだけだった。
「あの、シュヴァルツさん。犯人は分からないままですが、ひとつ不思議に思ったことがあるんです。」
私はグラフの中の四ヶ所を、ひとつずつ順番に指をさした。
「見てください。ここ、ここ、ここ、それにここ」
その四ヶ所は、滞在期間の矢印が途切れたようにぽっかりと空白になっている。
「ちょうど四日間、誰も人間界に滞在していない期間があります。人間界での行方不明事件は、この四つの期間で起きているんです。普通に考えれば、事件が起きた日時にこのリストにいる人達は誰も人間界にいなかったんですから、犯人ではないという結論になりますが……。でも、他の日は誰かしら滞在しているのに、この四日間だけはまるで調整されたように誰もいない。……少し違和感がありますよね」
シュヴァルツさんは、四つの空白を睨み付けて目を細めており、何かを掴んだ表情を見せた。