ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋

アルバさんはこの家を出る前に、見送りにきたオリーヴィアさんを振り返った。

「オリーヴィア。いいか、あんたが手を貸したせいで、困ってる奴がいる。やったことは許されねえ。ただ、正直に話してくれて、助かったぜ」

彼女はまた涙を流しながら、じんわりとその叱責を受け入れて、目を閉じていた。

「……わたくしこそ、貴殿方が訪ねてくださらなかったら、自責の念に駆られたメロディーしか奏でられないままだったでしょう。お話できて良かった。ときが来れば、然るべきところへ、わたくしの罪を申し出ることに致します」

「ああ。そうしてくれ」

彼女はきっと、言ったとおりに罪を償ってくれるだろう。

ヴァンパイアだって分かり合える。

人間界ではできなかったことが、今ここでできたのだと思うと、それは皮肉にも思えた。

アルバさんに抱えられながら、オリーヴィアさんの庭園から飛び立つとき、見送ってくれた彼女は小さくお辞儀をしていた。

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