ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋

この世界に来てすぐ、シュヴァルツさんにケガを治してもらった。ケガをしたのは、この世界に来る前のことだ。

“夜野”と名乗る犯人に追いかけられて、転んだとき。

そのときだけだったはず。

「……あなた……本当に、アルバさん……?」

私がそう呟くと、彼はこちらを見た。

仮面のせいで表情は読み取りにくいが、見えている口もとは、ぐにゃりと歪んだ笑みを浮かべている。

彼は乱雑だった仕草をいきなり紳士的なものへと変化させ、ルーズな髪型や襟元を正し、「やっぱり君は賢いね、白雪さん」と呟いたのだった。

ああ、あの声だ。

「……ダークナイト……?」

人間界で私を襲った犯人の声。

あまりのことに座ったまま呆然と彼の顔を見ていると、「また四十四番の方! 金貨五万でなんと三人目も落札です!」という司会者の声がバックミュージックのように響いてきた。

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