ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
目の前の観客たちは息を飲んで見ている。
血の匂いだけで私が極上の血と純潔の人間だと分かったその瞬間、このヴァンパイアの大群はどんな行動に出るのか。
迫りくる恐怖に耐えられず、ギュッと目を閉じた。
「……アカリ」
──え?
そのとき、耳元でダークナイトのものではない、かすかな声が聞こえた。
一瞬何が起こったのか分からなかったが、捕らわれていた力から解放され、途端に体がふわりと浮く。
目を開けると、私の体を黒のコートが包み込み、艶のあるウェーブの黒髪が目の前で揺らめいていた。
「貴様! 何のつもりだ!」
ダークナイトの声はすでに遠く離れている。
ギャラリーの騒がしい声が飛び交っていたはずなのに、その光景を見ていた今は無音で、まるで時が止まっているかのようだった。
この仮面の人は、さっきまで人間を競り落としていたヴァンパイア。
それでも、仮面をつけていても見覚えのある顎のラインが、腕の中からはっきりと見えた。
「シュヴァルツ、さん……?」
その姿も、腕の中の温もりも、甘い声も、この数日間いつも感じていた彼のものだ。