ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
「……生憎だが、それは脅しにはならない」
シュヴァルツさんはギシギシと音を鳴らしながら増長する牙を剥き出しにすると、空いている方の手袋を外し、現れた爪を五本とも鋭く尖らせた。
その様子に、ダークナイトと観客たちは、一歩後ずさりをする。
彼は続けた。
「この人間は俺が貰い受け、競り落とした三人とともに人間界へと帰す。それさえ果たせれば、ここで見た薄汚れたオークションのことも、貴様らのことも忘れてやろう」
シュヴァルツさんの言葉を受け、ダークナイトはわずかな迷いを見せた。
おそらく誰かの指示で動いているだけで、自分が関わっていると知られたこの状況に焦っている気持ちがあるのだ。そう思えた。
「……そうはいきません。僕は、僕はネロ様にっ……」
観客の多くも、仮面の下で彼と同じ表情をしているのが分かる。
それもそのはず、私が競りに出されようと、この場にいるほとんど者には手に入れるチャンスなどないのだ。
一部の大富豪が私を競り落とす場面を観劇することより、今は自分の身の安全が大切なはず。
ダークナイトのこめかみから一筋の汗が流れ落ち、観客の中のひとりも、声を上げた。
「待ってくれ!俺は何も知らない!オークションに人間を出品してくれなんて言っていない!信じて下さいシュヴァルツ様!」
その声に共鳴するように、声が飛び交い、ザワザワと騒がしくなっていく。