ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋

恐ろしくて、目を開けた。

「何これ……!?」

自分の体に暗闇が触手のように絡みついていて、すぐ目の前にあった暖炉の入り口が今は遠く、体が触手によって暖炉の奥へと吸い込まれていた。

すぐ側にあった足音も、もう聞こえない。

ずっと遠くで「いない。どこへ行った」と嘆く犯人の声が聞こえるだけで、やがて外の音は何も聞こえなくなった。

私の体は水の中に落ちていくように、暖炉の暗闇の奥底へと沈んでいく。

小さな白い光がぼんやりと現れた。

するとその光の中から誰かの手が伸びてきて、私の手首をがっしりと掴んだ。

「ひゃっ…!」

素肌じゃない、白い手袋をした男の人の大きな手。

「離して!!」

何かに掴まって抗おうともがいたが、何もない。

その手に引っ張られるまま、私の体はその光の出口へ向かって、手首から輪をくぐるように引きずり込まれていった。

< 17 / 209 >

この作品をシェア

pagetop