ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
優雅にオークションに参加していたときとは打って変わり、首筋の血管は浮き上がり、仮面の下の口元からは牙の混じった歯列が見えている。
「おい貴様、何勝手なことを言っている!その人間は俺が競り落とす!オークションを続けろ!」
「お前の手には渡さない。ネロとどんな約束を交わしたかは知らないが、諦めることだ」
「黙れ!純血のくせに、人間を元の世界へ戻すだと? 笑わせるな!冷酷な貴様のことだ、おおかたその極上の純潔も己の物にする気だろう!皆騙されるな!この男は人間欲しさ故にオークションに参加しているのだ!」
ハインリヒの勢いのある怒号に周囲は圧倒され始める。
この人の言うことは無茶苦茶で、根拠も何もなかったが、先程までの流れをわずかに変える勢いがあった。
まるでシュヴァルツさんだけが得をし、自分たちが損をする、そんな意識を大衆に植え付け、今度は彼らの反抗心を煽ったのだ。