ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
「そうだ、シュヴァルツ様は純血だ。冷酷で知られる純血が人間を助けるために競り落とすなんてこと、するわけない」
「やはり四人もの人間を手に入れて純潔を奪うおつもりか」
「シュヴァルツ様が人間を拐ったという話はただの噂だと思っていたが、まさか本当に……」
道を開けたかに思えた観客たちは、ハインリヒの周囲に再度集まりだし、新たな壁を作っていた。
恐怖が戻ってきて手の中にいるノア君をキュッと抱き締め、シュヴァルツさんの胸の中に隠れたけれど、彼は少しも動じる様子を見せない。
代わりに彼は私のことを下ろした。
「シュヴァルツさん……?」
「アカリ。心配するな。必ず助ける」
囁かれて背中を押されると、私はノア君ごと、この輪の中心に投げ出された。
ハインリヒは私と目が合うと舌なめずりをしたが、その目はすぐに前方のシュヴァルツさんを再度睨んだ。
「……何の真似だ」
「ハインリヒ。貴様の望みどおり、最後の競りに付き合ってやる。人間が欲しくば競り落とすことだ」
会場に歓声が響き渡り、ハインリヒは口元を吊り上げて牙を剥き出して笑う。
司会者が興奮気味に立ち位置へ戻り、マイクを取った。
「さあ!それでは気を取り直して、最後の競りを始めましょう!極上の血を持つ純潔の人間を手にするのは一体誰でしょうか!」
再び頭上からスポットライトがあてられ、その眩しさに私はノアくんを抱えてしゃがみこんだ。