ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
夢のような時間は長くは続かなかった。
外の騎士団たちが扉を破壊しようと響く衝突音に、扉がバキバキと壊れていく音が混じりだす。
「シュヴァルツ!もうこれ以上はもたねえよ!」
耐えきれず、頑丈だった扉が弧を描くように内側に反っていた。
いつの間にか三人の女の子たちの姿はなく、人間界の白の扉は開け放たれていた。扉は光に包まれているせいで、向こう側の様子は分からない。
「他の方々はもう帰しました!あとはアカリ様だけです!」
人間界への恐怖は消えても、シュヴァルツさんと離れる寂しさは消えはしない。
私を急かすアルバさんたちと、白の扉、目の前にいるシュヴァルツさん、三つにキョロキョロと目を移しながら、答えを求め、もう一度彼を見た。
「シュヴァルツさん、私っ……」
“やっぱり帰りたくない”と言いたかった。
しかしその前に、彼の指が私の頬を捕らえ、目を細めた彼の綺麗な顔が近づいてくる。
「んっ……」
唇に湿り気を感じてから、キスをされていることに気づいた。