ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋

一瞬ギョッとするアルバさんが目の端で見えたけれど、すぐに視界はシュヴァルツさんでいっぱいになった。

初めてここへ来たときにされた乱暴なものではない、優しくて消えてしまいそうなキス。

彼の舌が私の唇を開けるように歯列を割ると、そこからじんわりと痛むくらいの熱さが口の中に流れ込んでくる。

光を放つ熱は、彼の口から私の口へと移動して、喉の奥に落ちていく。

これは彼に預けていた魂だ。これを受け取ったら、すべて終わってしまう。

ここでのことも、彼のことも。

「シュヴァルツ!もう無理だ!扉が壊される!」

バキン、という破壊音とともに扉に亀裂が走り、そこから斧の先のような重い刃物の頭が見え隠れする。

ゆっくりとしたキスは終わり、シュヴァルツさんは私を持ち上げ、白の扉の前へと移動した。

「待って!」

彼は私の体を白の扉の向こうへと押し込もうとし、私は必死で扉の枠に手をかけ、それを拒否した。

背中にじりじりと焼けつく向こう側の世界の光は、今にも私を吸い込もうとしている。

< 196 / 209 >

この作品をシェア

pagetop