ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
「……シュヴァルツさんだったんですね、ずっと私のそばにいてくれたのは……」
「人を傷付ける度に心が痛いと嘆くお前のことが不思議だった。ヴァンパイアは、他人のために心を痛める感情を持ち合わせていない。純血の俺には理解できるはずのないものだ」
「そんなことないっ……」
「ああ。アカリが教えてくれた。どんな境遇にあろうと、お前は他人の不幸を願ったりせず、傷付けることに心を痛めていた。暖炉の向こうのお前の話は、やがて俺にありもしない感情を与えてくれた」
そのとき、今まで集めて持っていた不幸がパンと弾けて、キラキラ光る粒に変わっていくみたいに。
悲しみは涙と一緒に流れ出て、代わりに彼の言葉が私をいっぱいに満たしていた。
「誰かの幸せを願うということを、お前が教えてくれた」
暖炉の向こう側でずっと話を聞いてくれたシュヴァルツさんの姿が、瞼の裏に浮かんでくる。
私は不幸じゃない。不幸にならなくていい。彼の言葉の意味がやっと分かった。
「シュヴァルツさん……」
ずっと私を見ていてくれた。
今も、シュヴァルツさんの透き通る瞳に、私の顔がしっかりと映っている。
泣き虫。いつもそうやって泣いて。本当はひとりじゃないって、いつまで気付かないままでいるの。
昔からそう。笑ってよ、シュヴァルツさんが見てるんだから。もう不幸になんてならなくていいんだよ。
瞳の中の私と、初めてきちんと向き合えた。
欲しかったものは、あの暖炉の向こう側にずっとあったんだよ。
「……やっと笑ったな、アカリ」
ぐしゃぐしゃの笑顔で頷いて、彼の胸の中にもう一度収まった。