ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋

「そういえばさ、隣の研究室の水無月さんっているだろ?白雪さんと同級生の女の子」

「え?はい……」

加賀先輩は突然、別の話を始めた。

彼が名前を出した水無月さんとは同じ学部で、たまに授業で顔を合わせたり、挨拶をする程度で特に話したことはない。

彼女がどうかしたのだろうか。

「水無月さん、昨日から行方不明らしいよ」

え?

「行方不明?」

「そう。今朝ご両親が警察に届けたんだってさ。これで三人目だよな、月夜ヶ丘の行方不明者。ついにうちの大学からも被害者が出るなんてな」

先月、私の住む月夜ヶ丘町で、行方不明事件が二件立て続けに起きた。

水無月さんもその事件に関わっているのであれば、彼女は三人目の行方不明者ということになる。

若い女性が神隠しのように姿を消し、目撃者はおらず、警察は犯人どころかわずかな手がかりさえ掴めていない。

この平和な田舎町が、全国ニュースで取り沙汰されているほどの大事件だ。

いなくなった女性たちは一体どうしているだろう。私はそれを考えるたびに、胸が締め付けられる思いだった。

どこかで苦しんでいたり、酷いことをされているんじゃないかな。それどころか、もう生きてはいなかったり……。

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