ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
「二年って、ヴァンパイアの世界では短いんでしょうか。……こちらではすごく長いんですからね。本当に、すごく長いんです」
両手の指を重ねて触りながら、いつものように暖炉に語りかけた。
目を閉じて、暖炉の向こう側にシュヴァルツさんを思い浮かべる。
私は彼を覚えている。
彼と過ごした数日の出来事を、ひとつも忘れることなどできなかった。
「酷いです。シュヴァルツさん。私の記憶だけ消さないでいてくれたのに、もう二度と会わないつもりなんですか。……私だけ貴方を忘れられないままなんですか」
いくら語りかけても、返事をくれたことはなかった。
「……一目だけでも、会いたいです」
今まで何度も暖炉の中に入って願ってみたけれど、叶うことはない、もう分かっていた。
この館が壊されるとき、もう私とシュヴァルツさんを繋ぐものは無くなる。
しゃがみこんだふたつの膝小僧に、顔を埋めた。