ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
「この館は境界だ。この館の中には人間界への扉と、ヴァンパイアの世界への扉、ふたつの扉が存在している」
「ふたつの扉?」
「お前は俺の魂と共鳴したことで暖炉の歪を通ってこちらへ来たが、人間界への扉は別にある」
「じゃあ……私、そこから人間界へ帰れるんですか」
真っ先にそう聞いていた自分に、少し驚いた。
どこにも居場所がない私でも、人間界に帰りたいと思っているのだと、初めて気づいたからだ。
「ああ。俺なら扉を開けることができる。だが今はまだ帰せない」
「なぜですか?」
「手元に鍵がない。それに、人間界にはお前を襲ったヴァンパイアが野放しになったままだ。戻ったところでまた襲われるだろう。今のお前にとって、こちら側と同様に危険なはずだ」
不思議だった。
シュヴァルツさんが私を暖炉の向こうへ引っ張り込んだのは、私を助けるためで、今帰すことができないのも、私の身の安全のため。
どうしてこの人は、私を守ってくれるんだろう。