ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋

「お前の血はそれほど価値が高いと自覚しろ。ここで人間だと気付かれれば、ヴァンパイアどもに全てを奪われるだろう」

再度、椅子に座った。

カタカタと足の震えが止まらない。

目の前のシュヴァルツさんは私の震えが治まるまで黙ったまま間をとってくれたけれど、それは容易には治まるものではなかった。

代わりに、私は彼を見て尋ねた。

「どうして貴方は、私のことを襲わないでいてくれるんですか……」

ここへ来てからずっと疑問に思っていた。

シュヴァルツさんだって赤い瞳のヴァンパイアなのに、私の味方をしてくれる。

私を襲おうとするヴァンパイアをまるで敵のように言うし。

「コホン」

そこでノア君が割り込み、咳払いをした。

待ってましたと言わんばかりに胸を張っており、シュヴァルツさんもこの先の説明をノア君に一任するつもりらしく、ソファに深く腰かけてくつろぎ始めた。

「僕からご説明いたしましょう。我々ヴァンパイアは、人間を襲うことは禁じられています。人間を補食対象とする時代はとうに終わり、今は彼らの世界を守るよう定められているのです。人類の文明の進化は、我々にとっても学ぶべきものが多いですからね」

「はあ……」

補食対象にされるという話ばかりされていますが、と口を挟みたくなったが、ぐっとこらえた。

「理由は人類愛護の観点からだけではありません。思考力の低下、一時的な運動障害、中毒性。人間の血液を過剰に摂取することは、我々ヴァンパイアに悪影響をもたらすとされています。わざわざ住む世界を分けたのもそのためです」

つまり、人間でいうと、アルコールみたいなもの?

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