ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
「しかし、人間の血は古より我々に伝わる嗜好品。完全に絶つことは難しいのです。現在では権利を得たヴァンパイアのみが館から人間界へ赴き、人間の血を吸うことが許されます。もちろん、倫理的観点から、同意なく処女を奪うことは許されておりません」
ノア君は説明は分かりやすかった。
しかし話の内容はわかったけれど、あまつさえ実感というものは全く沸いてこない。
彼の話だと、館と人間界を行き来しているヴァンパイアは他にもたくさんいるように聞こえる。
“夜野さん”に化けていたヴァンパイアのように人間界に隠れて住み着いているヴァンパイアが存在しているのだと思うと、ゾッとした。
「でも、私はヴァンパイアに襲われかけたんですよ。私だけじゃない、他にも三件、人間界で行方不明事件か起きています。極上の血とか、私みたいなその……純潔の人間を狙うヴァンパイアがいるんでしょう?」
「はい。中にはそのように悪の道に走る者も存在しています。まさにそのような輩を通さないよう取り締まり、人間界を守る責務をおっておられるのが、政府高官であり館の門番を務めていっしゃるこのシュヴァルツ様なのです!」
ノア君は手をひらひらさせながら、全身でシュヴァルツさんを示した。
一方、ソファーに肘をついて座っている彼はそこまでを聞くと、大きなため息をついた。