ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
「では下界への扉を開けてネロのもとへ行く。アカリ、お前は館で待っていろ」
「えぇ!?」
「……文句があるのか」
私はまた椅子から立ち上がっていた。
シュヴァルツさんも袖口や襟元を軽く整えながら立ち上がり、それはどこかへ出掛ける準備に違いなかった。
体の震えが戻ってくる。またひとりになるなんて。
「あの、シュヴァルツさんはどこへ行くんですか?」
「言ったろう、下界だ。この関所はヴァンパイアの世界への扉になっている。ネロがいるのはこの扉の向こうだ」
彼は大きな鉄の扉を指差した。
錆びて濁った苔のような色をしたその扉は、よく見ると凹凸で一面に絵が描かれており、それは悪魔のような牙と爪を持つヴァンパイアの姿だった。
下界というのがどんなところか、これを見ると嫌な予感しかしない。
でもここにひとりで待っているなんて……。
「待って、行かないでください……ひとりは嫌です、怖いんです……」
「ノアをそばにつけてやる」
「お願いです……貴方と離れたくない……」
抑えきれずに涙が溢れ、膝にポタポタと落ちていった。
置いていかれることを想像してみたが、恐ろしくてとても耐えられそうにない。