ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋

「では下界への扉を開けてネロのもとへ行く。アカリ、お前は館で待っていろ」

「えぇ!?」

「……文句があるのか」

私はまた椅子から立ち上がっていた。

シュヴァルツさんも袖口や襟元を軽く整えながら立ち上がり、それはどこかへ出掛ける準備に違いなかった。

体の震えが戻ってくる。またひとりになるなんて。

「あの、シュヴァルツさんはどこへ行くんですか?」

「言ったろう、下界だ。この関所はヴァンパイアの世界への扉になっている。ネロがいるのはこの扉の向こうだ」

彼は大きな鉄の扉を指差した。

錆びて濁った苔のような色をしたその扉は、よく見ると凹凸で一面に絵が描かれており、それは悪魔のような牙と爪を持つヴァンパイアの姿だった。

下界というのがどんなところか、これを見ると嫌な予感しかしない。

でもここにひとりで待っているなんて……。

「待って、行かないでください……ひとりは嫌です、怖いんです……」

「ノアをそばにつけてやる」

「お願いです……貴方と離れたくない……」

抑えきれずに涙が溢れ、膝にポタポタと落ちていった。

置いていかれることを想像してみたが、恐ろしくてとても耐えられそうにない。

< 45 / 209 >

この作品をシェア

pagetop